26 パーソナライゼーションに関する注意
学習のパーソナライズ
教師は誰でも、学習をパーソナライズしています。具体例を追加したり、必要に応じて個別の注意を学習者に向けたりするだけでも、それはできるのです。教えること自体が、たとえばテレビ放送による授業とは対照的に、パーソナライズの行為といえるでしょう。教師は、授業を調整することで、学習者が学習内容を理解できるようにしているのです。教師は、学習者にたいして、新しい知識やスキルを既有の知識、個人的な観察、社会的な経験と結びつける手助けをします。教師は、学習者が学んだことを最大限に活かせるように支援しています。
パーソナライズされた学習とは、学習者のニーズ、能力、文化的背景に合わせて、さまざまな学習環境と体験を創出することです1。もちろん、パーソナライズの範囲と程度は多様です。専門家は、パーソナライゼーションの6つの次元を特定しました−なぜ、どのように、何を、いつ、誰の、どこで学習が行われるか、という6つです2。


一対一の個人指導は、パーソナライゼーションの究極のかたちです。1960年代、ベンジャミン・ブルームは、平均的な学習者が個人指導でよりよい成績を発揮することを示しました。彼はまた、個別指導が高得点者と低得点者のあいだの学習格差を埋めることをも明らかにしました。実際の教室では、たとえ学習者が10人であっても、個々の学習者の利益になるよう内容をカスタマイズするには、多くの労力を必要とします。真のパーソナライゼーションは事実上不可能なのです。学習者のあいだに学習格差があることを教師が知っていたとしても、時間の制約によりそれを埋められないかもしれません。したがって、教師が最善を尽くしていても、現状のやりかたでは取り残される学習者が絶えないことになります。

これはテクノロジーが手助けできるところです。
テクノロジーが強化するパーソナライズド学習
テクノロジーを用いれば、学習プロセスをカスタマイズできます。ここでのテクノロジーには、モバイルアプリやオンラインプラットフォームから、スタンドアロン(単体完結型)の学習システムまで、あらゆるものが含まれます2。人工知能、データへのアクセス、マイニング技術、クラウドコンピューティング、手頃な価格のハードウェアにより、アプリケーションがシームレスで実用的なものになったいま、テクノロジーの利用はより効果的になっています。
適切に設計されたテクノロジーは、先に述べた問題を克服するのに役立つだけではありません。従来の授業に統合するかたちで宿題や授業内課題に用いれば、学習者が基礎的なスキルを習得したり、練習したりする手助けになります。このようなテクノロジーによって、教室内での対話、個別の配慮、問題解決に充てる時間を増やすことができます。さらに、宿題に取り組む様子をモニターし、学習者がどこまで進み、どこで苦労しているかを把握することができるのです3。

授業によっては、ソフトウェアのほうが効果的な場合があります。数学における3次元空間の視覚化、語学授業における発音練習、あるいはヒト細胞内のプロセスを説明するアニメーションなどが相当します。
教育向けAIソリューションは、おしなべて、学習をパーソナライズするために、さまざまなレベルで活用できます。この章では、適応型学習システムの使いかたについて説明します。
1 Groff, J., Personalized Learning: The State of the Field & Future Directions, Center for Curriculum Redesign, 2017.
2 Holmes, W., Anastopoulou, S., Schaumburg, H & Mavrikis, M., Technology-enhanced personalised learning: untangling the evidence, Stuttgart: Robert Bosch Stiftung, 2018.
3 Feldstein, M., Hill, P., Personalized Learning: What It Really Is and Why It Really Matters, Educause Review, 2016.
4 Taylor, D., Yeung, M., Bashet, A.Z., Personalized and Adaptive Learning, Innovative Learning Environments in STEM Higher Education pp 17–34, Springer Briefs in Statistics, 2021.