21 学習分析と教育データマイニング

Anne Boyer; Azim Roussanaly; and Jiajun Pan

学習分析とは何か

近年、多くの組織がデータ分析を活用して課題解決を図り、業務に関する意思決定を改善しています。教育分野も例外ではありません。仮想学習環境(VLE)や学習管理システム(LMS)の普及により、学習者がこれらのツールを利用する過程で蓄積される膨大な学習データを活用できるようになってきたためです。

学習分析(ラーニング・アナリティクス)は、「学習者および学習が行われる状況に関するデータを、学習とその環境を理解し最適化することを目的として、測定・収集・分析し、報告すること」⁴と定義される学術分野です。

一般に、解決したい問いに応じて、次の4種類分析に区別されます。

  • 記述的分析:過去に何が起きたか
  • 診断的分析:なぜそれが過去に起きたのか
  • 予測的分析:将来、何が起きそうか
  • 処方的分析:その結果に影響を与えるために、どのような行動を取るべきか

何をするのか

可視化から提案システムまで、この分野の研究は現在も活発に進められています。ここでは、文献で頻繁に取り上げられる論点を概観するにとどめます。これらの論点は、主に学習者や教師が利用する学習分析ツールの設計や活用へとつながっています。

学習成果を予測し、向上させる

図1:パデュー大学の学生向けダッシュボード

学習分析の代表的な応用の一つが、学習不振の予測です。学習指標はデジタルな履歴から自動的に算出され、学習者自身が確認できるため、それを手がかりに学習の進め方を見直し、調整できます。

初期の実験の一つは、米国のパデュー大学で、信号機のような表示を用いたダッシュボード型のモバイルアプリケーションを用いで実施されました¹。各学生は自分の進捗指標をモニターできます。ダッシュボードのスクリーンショットは図1に示されています。

また、こうした指標を教師側に提示し、学習不振の兆候を早めに知らせる「早期警戒システム(Early Warning System: EWS)」として活用する場合もあります。フランス国立通信教育センター(CNED)では、進行中の研究でこの方法が採用されています²。EWSの目的は、学習者を担当するチューターにできるだけ早く注意喚起を行い、必要に応じて補習などの支援を速やかに実施できるようにすることです。

学習プロセスを分析する

図2:METALプロジェクトダッシュボード

学習分析の技術は、学習者一人ひとり、または学習者集団(例:クラス)が「どのように学んでいるか」を行動データにもとづいてモデル化するのに役立ちます。こうして得られたモデルを学習分析アプリケーション上で可視化すると、教師は学習のつまずきや弱点を把握しやすくなり、教材や指導方法の改善に必要な手がかりを得られます。さらに、学習プロセスの分析は、学習者のエンゲージメント(学習への関与)の程度を捉える方法にもなります。例えば、e-FRANのMETALプロジェクトでは、中等教育の教師チームと共同で設計したダッシュボードに、複数の指標がまとめて表示されます(図2)³。

学習経路を個別化する

学習経路の個別化は、学習提案(レコメンド)機能や適応学習システムによって実現されます。学習提案機能は、教育目標の達成に役立つ教材や学習リソース、あるいは望ましい学習行動を、学習者ごとに提案することを目的とします。

また一部のシステムでは、教師が「ループに入る」形を取り、システムが提示した提案内容を教師が確認し、必要に応じて承認・調整します。適応学習システムは、学習者の状況に応じて学習経路を継続的に調整し、学習者がより自分のペースで、技能や知識を伸ばせるよう支援します。

効果はあるのか

先行研究で報告されている効果は、主に(高等教育を含む)学生に関するものが中心です。多くの報告では、学習者の成績が向上する傾向が示されています(例:米国パデュー大学ではA・B評価が10%増加)。一方で、教師にとって学習分析がどのような影響をもたらすかの評価は、より複雑です。技術受容モデル(Technology Acceptance Model: TAM)にもとづく研究では、教師が学習分析ツールの活用を概ね肯定的に捉えていることが示唆されています。さらに、ある研究ではSWOT分析(Strengths/Weaknesses/Opportunities/Threats)によって受容の状況を整理しており、その結果を再掲示します⁵(図3参照)。

図3:学習分析受容に関するSWOT分析⁵

SWOT分析の「脅威(Threats)」と「弱点(Weaknesses)」で指摘された注意点の一部は、学習分析研究学会(Society for Learning Analytics Research: SoLAR)のコミュニティが、学習分析を実施するにあたり「倫理を設計段階から組み込む(ethics-by-design)」方針を推奨するための検討材料となっています(Drashler-16)。この推奨事項は、次の8つのキーワードからなるチェックリストとして整理されています:Determine(目的・範囲を定める)、Explain(説明する)、Legitimate(正当性を確保する)、Involve(関係者を関与させる)、Consent(同意を得る)、Anonymise(匿名化する)、Technical(技術面で担保する)、External(外部の視点・監督を取り入れる)(DELICATE)。


1 Arnold, K. and Pistilli, M., Course signals at Purdue: Using learning analytics to increase student success, LAK2012, ACM International Conference Proceeding Series, 2012.

2 Ben Soussia, A., Roussanaly, A., Boyer, A., Toward An Early Risk Alert In A Distance Learning Context, ICALT, 2022.

3 Brun, A., Bonnin, G., Castagnos, S., Roussanaly, A., Boyer, A., Learning Analytics Made in France: The METALproject, IJILT, 2019.

4 Long, P., and Siemens, G., 1st International Conference on Learning Analytics and Knowledge, Banff, Alberta, February 27–March 1, 2011.

5 Mavroudi, A., Teachers’ Views Regarding Learning Analytics Usage Based on the Technology Acceptance Model, TechTrends. 65, 2021.

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学習分析と教育データマイニング Copyright © 2024 by Anne Boyer; Azim Roussanaly; and Jiajun Pan is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License, except where otherwise noted.

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