30 AIとは:適応型システムは学習者のことをいかに学ぶか(1)

適応型学習システムを見ても、どこに適応させているのかを特定するのは非常に困難です1。どのような技術が使用され、なにに使用されているかもシステムによって異なります。
しかし、すべての適応型学習システムは、誰に教えるか(学習者についての知識)、何を教えるか(領域についての知識)、どのように教えるか(教育方法についての知識)を知っています2。
理想的なALSは、複数の方法で適応させます。学習者に近いところでは、学習アクティビティの順序が適応されます。YouTubeが推奨動画のリストを適応させるのと同様です。また、学習アプローチと難易度もパーソナライズされるかもしれません。
裏側では、各アクティビティについて、ALSが段階的な進捗状況をモニターしています。誤解があれば、フィードバックやヒントを適応させて、訂正します。また、受講生が以前に学習した概念を思い出せない場合、追加コンテンツを提示することもあります。こうした裏側の部分について、一部の専門家は、教師に任せるのが最善だと主張しています。特定の科目とタスクのすべてのルールをプログラムするのは費用と時間がかかるだけでなく、教師の知識と経験はつねに機械を凌駕するからです3。
適応システムが学習者を学ぶ方法
すべての推奨問題(Youtubeはあなたのことをいかにして学ぶか(1)を参照してください)と同様に、ALSはタスクを機械で答えることができるひとつ以上の代理質問に分割します。繰り返しになりますが、ここで問う内容、つまり予測対象の選択は、提示される推奨内容に大きな影響を与えます。
マーケティング資料では、スコア向上、雇用可能性、エンゲージメントといった複数の目標がしばしば言及されます。システムの独占的な性質上、どの質問がシステムに組み込まれているのか、どの目標が最適化されているのか、短期目標と長期目標がどのように区別されていのるかは、通常は不明です(たとえば、与えられたコンテンツを習得しないと次に進めないかどうかといったことです)4。
機械学習が使用される場合、選択された目標によらず、予測そのものは同様のスキルレベルと嗜好をもつ他の学習者に基づいて行われます。つまり、同じモデルに分類される学習者です。
学習者モデル
学習者モデルを作成する場合、開発者は学習プロセスに関連するような学習者の特徴を知ろうとします。学習者を直接観察して教育方法を調整できる教師とは異なり、機械が収集して処理できるデータは限られています。
学習者モデルで考慮される典型的な特徴:
- 学習者はなにを知っているか – 知識レベル、スキル、誤解5,2,6。 これらは通常、数学の問題1にたいして学習者が提出する答えを確認するなど、評価を通じて推測されます1。この事前知識は、学習完了時に知っていなければならないことと比較されます。
- 学習者はどのような学習を好むか:学習プロセスと好み5,6。 たとえば、学習者が正解するまでの試行回数、参照した教材の種類、アクティビティに対する評価1、または学習者が最も関心を寄せた資料(画像、音声、テキスト2 )などです。ALSのなかには、スキルがいつ、どのように学習されたか、そしてどの教育方法が最も効果的だったかを記録できるものもあります6。
- 学習者に意欲があるか:感情や情緒は、学習者が直接記録することも、あるいは、発話、表情、視線、ボディランゲージ、生理的シグナル、またはそれらの組み合わせから間接的に抽出することもできます。こうした情報は、学習を妨げる退屈感や不満といった負の状態から、能動的関与や楽しみなどの正の状態に学習者を誘導するために活用できます7。
- 記憶力、注意力、問題解決能力、意思決定能力、状況分析、批判的思考などの認知的側面5:これらはどのような状況でしょうか?
- 彼らがどのようにコミュニケーションをとり、協働していますか5? たとえば、彼らは他の学習者のフィードにコメントを投稿しているか、問題を解決するために他の人とどのように話し合っているか、ということです1。
- 自己調整、自己説明、自己評価、自己管理5、助けを求めること、自分の思考を認識し、コントロールできるなどのメタ認知スキルはどのような状況ですか?たとえば、学習目標の選択方法、既習知識の活用、問題解決戦略の意図的な選択方法5などです。
これのデータは変化するので、記録と更新が必要ですが、年齢、性別、母国語、電子メールのアイデンティティなどの静的特性もモデルには含まれます2。
ほとんどのALSは、学習者とのやりとりに基づいて学習者モデルを作成します。一部のALSは、他のサイト、とくにソーシャルメディアから情報を集めています。各学習者のモデルが利用可能になると、機械は学習者間の類似度を計算し、特定の学習者がアクティビティ、具体例、質問によって学びを得られる確率を推定します3。
ドメインモデル
ALSの学習オブジェクトとYouTubeの動画とのあいだには緩やかな共通点を見出すことができます。科目は概念とスキルに分けることができます。これらは知識ユニットと呼ばれ、学習者が習得すべきものです3。各知識ユニットには、内容を学習するための一連の学習オブジェクト群と、学習成果を評価するための一連の評価活動群があります。一部の研究者は、オブジェクトをさらに細分化しますが、ここでは区別せずに進めます。
学習オブジェクトには、読むべきテキスト、動画、一連の練習問題、インタラクティブなアクティビティ(単純な穴埋めからシナリオベースの学習経験まで)、インタラクティブなアニメーションなどがあります1 。学習オブジェクトは学習者に必要な知識を提供し、評価活動は知識が習得されたかどうかを示します3。領域モデルには、学習オブジェクトのすべての特徴が含まれています。関連する知識ユニットと評価も含まれます。
学習者が次に学習する内容は、知識ユニット間の相互関係に依存します。
これらの知識ユニットは、モデルに入れ込む必要があります。学習オブジェクトAとBの両方が学習オブジェクトDを学ぶ前提条件となるかもしれません。したがって、AとBは、Dの前に習得する必要があります。一部の知識ユニット間には、どのように学んでゆくべきかを規定するような秩序があるのです3。逆に、学習者がDに対応する問題を正しく解くことができれば、その学習者はAとBをともに習得できているとみなせるでしょう。
これらの関係の一部は、その科目の専門家が提供できます。そのほかの推論は、機械によって学習可能であり、知識ユニットが習得された確率を予測できます。このような習得の判断には、学習者がDの質問に正答したという事実から、学習者がAとBを習得済みであるとシステムが認識することも含みます。この情報と、学習者モデルや領域モデルの他の特徴と組み合わせて、学習経路や学習オブジェクトを推奨できるようになります。
学習オブジェクトのその他の機能には、アクティビティの難易度、人気度、評価などがあります。ここでの目標は、YouTubeの推奨システムと同様に、利用可能なデータからできるだけ多くの情報を引きだすことです。
1 EdSurge, Decoding Adaptive, Pearson, London, 2016.
2 Alkhatlan, A., Kalita, J.K., Intelligent Tutoring Systems: A Comprehensive Historical Survey with Recent Developments, International Journal of Computer Applications 181(43):1-20, March 2019.
3 Essa, A., A possible future for next generation adaptive learning systems, Smart Learning Environments, 3, 16, 2016.
4 Bulger M., Personalised Learning: The Conversations We’re Not Having, Data & Society Working Paper, 2016.
5 Chrysafiadi, K., Virvou, M., Student modeling approaches: A literature review for the last decade, Expert Systems with Applications, Elsevier, 2013.
6 Groff, J., Personalized Learning: The state of the field and future directions, Center for curriculum redesign, 2017.
7 du Boulay, B., Poulovasillis, A., Holmes, W., Mavrikis, M., Artificial Intelligence And Big Data Technologies To Close The Achievement Gap, In: Luckin, Rose ed. Enhancing Learning and Teaching with Technology. London: UCL Institute of Education Press, pp. 256–28, 2018.